関係人口プロジェクト

2023.01.16

2022年度滞在型プロジェクト成果報告①

北区松浜地域で行われた県外学生向け滞在型プロジェクトに参加した学生の成果レポートを掲載します。

 

松浜の和と輪

 

まえがき

 これが、私にとって初めての越境でした。
 上京してから早1年がたっていた今年の夏。大学では色々な経験をするぞ!と意気込んでいたものの、新型コロナウイルスの拡大によって思うように新しいことに挑戦できないまま大学生活の半分以上が過ぎてしまっていたことに、若干の焦りや不安を感じていました。そんなとき、新潟県新潟市の北区松浜地域で学生受け入れのプロジェクトがあることを知りました。その名も「花火と商店街のある地域を体感するプロジェクト」。花火と商店街という言葉になんとも好奇心をくすぐられた私は、すぐそのプロジェクトに応募したのでした。
 今回のプロジェクトは本来8月に4泊5日のプログラムで構成されており、メインイベントである「阿賀野川ござれや花火」のボランティアスタッフとしての活動に加え、松浜地域一体や商店街を自由に散策したり、実際に商店街の方にお話を聞いたりする中で得られた気づきや発見をWeb記事に載せようという取り組みでした。8月から私を含め、学生4人が参加し、順調に進んでいた矢先、思わぬアクシデントが起こってしまい、このプロジェクトは途中中断をせざるを得なくなりました。しかし、2日の滞在を通して、松浜の方々の温かさと美味しい食べ物にすっかり魅了されてしまった私は、10月の青空バザールに合わせて再び松浜に足を運びました。今回は、松浜でのイベント体験記に加え、その2回の訪問を経て私が感じた松浜の魅力や学びを記してみたいと思います。

 

 

松浜の暮らしの様子

アットホームな地域のコミュニティスペース「こらぼ家(や)」

 まず私たちは、地域の茶の間として松浜の方々が集まるコミュニティ広場「こらぼ家」に到着しました。公民館というとイメージがしやすいでしょうか。しかし、私がイメージしている「何か目的がないと使用しづらい公民館」とは違い、ただ地域の人たちが談笑できるような場所として「こらぼ家」は存在していました。それに私は驚きました。ここで私は、松浜の方々は地域の方とのコミュニケーションを大切にされているということを初めて実感しました。
 今回は「こらぼ家」を運営されている上松さんご夫妻のご厚意で、私たち学生は自由に利用させていただきました。施設は旧坂井様宅の分家をリノベーションしており、築年数は経っているものの趣きの残る立派な建物でした。運営費は地域の方が持ち寄った暮らしの品や衣服などをフリーマーケットのようにすることなどで賄っているようでした。

 

 

商店街の様子

 「商人の街」と呼ばれる松浜には、地域に根ざした個人商店がたくさんあることが印象的でした。昔ながらの八百屋さん、時計屋さん、そして精肉店などがあり、数は減っているものの地元の人がよく利用する大切なパイプとしての役割をそれぞれのお店が担っているようでした。1日目に商店街散策をした際に、どこのお店に行っても「ご苦労さん」と声をかけてくださったことに、なんともいえない居心地の良さを感じました。そこで私は、商店という存在が、地域の人にとってただ商品を購入する店舗としての役割だけでなく、人が繋がってコミュニケーションを生成する場としても重要な役割を果たしているのではないか?と思ったため、後日改めてお話を伺いに各商店を巡ることにしました。

 

 

「万屋」の個人商店

 まずそこで驚いたのは、とある酒店では、お菓子や日用品に加え、天ぷらやお惣菜、お肉といった食料品まで数多くの商品がショーケースに入っていたことでした。酒店といえば、おつまみのような食べ物がおいてあるイメージはありましたが、そのバラエティの豊かさがとても新鮮に映りました。
店主の方にお話を聞いてみると、「足腰の悪いお年寄りが多く住んでいるこの地域では、お客さんに頼まれたらお酒以外も取り寄せて届けに行っている」とのことでした。このお店では、近くの老人ホームに食材などを届けに行っているそうです。
こうしてもともと酒店をなりわいとしていたものの、地域にねざしたお店として長く居続けるためには、お酒以外の商品も置く万屋としての役割を請け負わないといけないということを知りました。そうした現実的な問題が垣間見えた反面、自ら足を運んで人に関わりに行く「目に見えない繋がり」を大切にされている姿がとても印象に残りました。

 

 

松浜でのイベント

青空バザール

 青空バザールは、年に1度商店街の前の通りに松浜のお店が一斉に出店する、賑やかなイベントです。あいにくの天気ではありましたが、最近新しくできたカレー屋の「pino」さんのカレーをはじめ、鈴カステラ、オムそば、衣服の出店、そして地元の子どもたちによるダンスやチアのパフォーマンスなどで賑わいを見せていました。

 

 

ござれや花火のボランティア

 今回のメインイベントであるござれや花火は、大雨の中での開催となりました。雨脚が強く、お客さんが来ないのではないかという懸念がありましたが、開始時刻にはたくさんのお客さんが土手に集まり、3年ぶりのござれや花火を成功という形で終えることができました。
 これまで花火大会というとただ見物するだけでおわりでしたが、運営側の一員として参加させていただいたことで、「なんとか成功させたい」という思いを強く持った商工会の方々がいること、そして松浜の方々にとっても、とても思い入れのある花火大会ということを知ることができました。実際に、再び松浜に来たときに懇親会を開いてくださった商工会の方々からもござれや花火にかける思いを直に聞くことができ、改めて貴重な経験をさせていただいたなと実感しました。

 

私が見て、体験して感じた松浜の魅力

 人との関わりをとても大切にしている松浜の方々。私は今回学生受入れのプログラムの一貫として関わりを持たせていただきましたが、声をかけるとフランクに接してくださる方がたくさんいて、その人の温かさに凄く心が温まりました。こらぼ家をはじめ、各商店が地域の人々に自ら足を運んだり、そこでコミュニケーションを取る姿は、松浜の方たちにとってはごく当たり前の日常でした。しかし、普段東京で暮らしている私にとって、その光景は凄く新鮮で、それと同時に心があったかくなるような安心感を感じられました。それは、多様な人がいる東京では、他人に関与しないことで秩序や平和を保っているかのような、どこか冷たい雰囲気があるのを感じ取っていたからかもしれません。ましてや、学校やバイト、自宅の往復しかしていなかった私にとっては、何らかの利益を得るためといった目的をもつのではなく、松浜の方々のように「繋がりそのもの」を大切にする人との関わり方に、すごく憧れや居心地の良さを感じました。

 また、今回の企画でずっと泊まらせていただいた「民宿しかい」さんでは、松浜で採れた旬の鮭や、お腹が膨れるほどのたくさんのお食事をご用意してくださいました。どれも本当に美味しく、また「若者にはたくさん食べさせたい」という女将さんの優しさとサービス精神にも心打たれました。

 

 

まとめ

 今回の2回の来訪を通して、イベントが重なってはいたものの、ありのままの松浜を体験することができたように感じました。実際に松浜で暮らすとなると、そこには地域特有の課題もあるようでしたが、どこの地域に行っても何かしらの問題はつきものだと思います。しかしそうした問題も、松浜ではいい意味で大事として捉えていないように感じました。それは、もとからあるものを大切にする文化と、変化を柔軟に受け入れる寛容性、そしてゆるくなだらかに人や社会とつながり続ける地域性が心のゆとりを生み、精神的な豊かさをみなさんが持っていらっしゃるからだなぁと思いました。また、松浜ではここには載せ切れないほどたくさんの貴重な経験や出会いをさせていただきました。今回企画して下さった関係者の皆様、そして受け入れてくださった松浜の皆様に心から感謝申し上げます。本当にありがとうございました。これからも松浜の関係人口の一員として、地域や人々とゆるく繋がっていきたいと思います。

法政大学 朝倉 芳子

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