北区松浜地域で行われた県外学生向け滞在型プロジェクトに参加した学生の成果レポートを掲載します。
こらぼ家(や)が生みだすもの
私はこの度「学生×地域の魅力探求プロジェクト『トビラ』2022」に参加し、8月24日~26日の3日間と10月10日の計4日間、新潟市北区にある「松浜地域」で過ごしました。
計4日間の間に花火の運営のお手伝いをしたりバザールに参加したりしましたが、今回は、松浜の地域の茶の間である「こらぼ家」について、インタビューしてきたので、紹介していきたいと思います。
こらぼ家について書こうと思った理由
皆さんは、新潟市で展開されている「地域の茶の間」をご存じですか。地域の茶の間は、地域住民が気軽に出向いて交流できる場所であり、松浜地域以外にも市内で多く開場されています。この「地域住民が気軽に出向いて交流できる場所」の存在が、人との繋がりについて興味を持っている私にとって、すごく魅力的な場所であると感じ、紹介したいと思いました。また、松浜で過ごす日々のなかで、地域住民同士の「結びつきの強さ」を会話やイベントを通して感じました。その強さの理由の一つとして影響を与えているであろう松浜の地域の茶の間「こらぼ家」について紹介することが、松浜の魅力の発信に繋がると考えています。
こらぼ家
松浜の地域の茶の間であるこらぼ家は、もともとお茶屋さんの跡地を何か有効活用できないかと考えた末に設立されました。しかし、当初は建物の維持費・家賃を補うことができず、約3年で閉場してしまったと言います。そんなとき、地域住民の開場を願う声がきっかけで再度開場し、現在まで続いているそうです。
こらぼ家という名前の由来は、松浜の商店街とそれを利用する消費者、そして、地域住民とのコラボ、という意味で名付けられたそうで、一戸建ての民家がまるごと利用されています。室内には畳が敷かれているスペースもあり、オレンジ色の電球が放つ光が室内に温かみを加え、どこか安心できる雰囲気の場所です。開館時間は朝10時で、常連さんになると開館後すぐに集まってくるとのこと。私たちが訪れたときも地域住民の方が出入りし、談笑していました。
こらぼ家の○○が住民を魅了させる
管理者である上松さんは、こらぼ家に人が集まってくることに対して「魅了させる『何か』がある」とおっしゃっていました。その「何か」とは何か、自分なりに考えてみようと思います。
まず、こらぼ家の室内で、地域の茶の間全体に関するルールが書かれた張り紙を見つけました。この張り紙が交流をより促す効果を与えているもののひとつではないかと思います。
「いない人の話はしない」となると、自分の話に耳を傾けてもらいやすくなるし、同じ場所にいる相手の話が聞けるため、お互いをよく知れる気がします。誰もが会話に参加しやすくなって、こらぼ家には必ず集まった人たちの声が響いています。その声が人と人を繋いでいると思いました。
次に、こらぼ家をなぜ利用するのか利用者の方の一人に質問しました。すると、「住民同士で交流していると勢いがつくから。」という言葉が返ってきました。こらぼ家は、大人数が利用できる場所です。いろいろな人が集まると、自分とは異なる意見や考えに触れる機会が増え、その考えに刺激されることがありますよね。勢いがつくというのは、刺激を受ける感覚から湧き出てくるものではないかと思いました。
最後に、こらぼ家を利用したことで良かったことは何か質問しました。すると「常連さん同士が家族みたいな関係になった。」「閉館しているときにもお出かけをするようになった。」とおっしゃっていました。約束をしていなくても、決まった時間に行けば知り合いともそうでない人とも出会える。そして、それが習慣化されていくことで、お互いが顔見知りになり関係性が深まっていく、ということを表しているのではないかと考えました。この言葉を聞いて、こらぼ家は人が関係を構築するために必要な時間を提供している場所であると心から思いました。
以上のことから、地域住民を魅了させるこらぼ家の「何か」とは「繋がる声により刺激を受ける時間が提供されること」なのではないかなと私は思っています。
上松さんと、こらぼ家の今後
松浜の地域の茶の間は上松さんが管理しています。上松さんは、こらぼ家を常連の方だけでなく初めての方にもどんどん利用してほしいと願っていて、タクシーのような乗車サービスを用いて、こらぼ家への行き来をより手軽にしたり、土日には子どもたちのための学習塾を開き、近隣の大学の大学生にボランティアとして来てもらったりすることを考えているそうです。このお話を聞いて、上松さんはこらぼ家での交流から地域を活性化させていきたい、こらぼ家にはその力がある、という思いを抱いている方だと感じました。また、「こらぼ家で得たノウハウを他の地域にも広めたい」とおっしゃっていて、人との結びつきや関係性の広がりを大切にされている方であるとも感じました。
いつか学習塾が開設されたら近隣の大学の学生など若い世代が松浜との繋がりを持ち、それが波及して商店街のほうにも若者のパワーをもたらすのではないかと思いました。
最後に
自分の声を聞いてもらえる場所が習慣的に存在することって、すごく素敵なことだな、とこの松浜での会話を通じて思いました。私は現在東京で暮らしていますが、入学した年から新型コロナウイルスの影響を受け学校に通えず、さらに、人見知りな性格が邪魔をして交友関係を広げることができなかったため、それが辛い時もありました。だからこらぼ家のような交流ができる場所は、以前の私のように、何か話したいけど話す相手、場所が上手く定まらない人にとって、新たな居場所となる可能性があると思います。もちろん、話す相手や場所は家族でも友人でも、家でも、自分が自分らしくいられるなら、誰でもどこでもいい。でも、その選択肢の一つに「地域」そして「地域住民」があってもよいのではないでしょうか。
4日間という短い期間でありましたが、松浜の地域住民の皆様、関係者の皆様、一緒に旅をしてくれた3人、大変お世話になりました。ありがとうございました。
明治学院大学 品田 真結子