移住者インタビュー

移住者インタビュー
絞り込み

年代

家族構成

移住スタイル

2025年11月4日

新潟移住の光と影:東京から地方へ、ある企業人の赤裸々な移住体験記

移住者名 阿部 善弘 (あべ よしひろ)さん
移住年月 2023年4月
移住スタイル Iターン
年代 30代~40代
家族構成 一人暮らし
職業 会社員

移住までの経緯・概要

 生まれはフィリピンで、3歳まで海外で過ごした後、群馬の叔父叔母に預けられて育ちました。小中高はずっとサッカー漬けで、その頃からおしゃべりで人と関わるのが好きでした。大学は学習院大学法学部政治学科に進学し、西洋政治思想史を学びながら、ヨーロッパの歴史や哲学にものめり込みました。

 卒業後は浅草橋の小さなゲーム会社に入り、モバゲーやグリー全盛期にプランナーとして働きましたが、1年ほどで「手に職をつける」ことの重要性を感じ、未経験からエンジニアに転職。当時はまだZoomはなく、ビデオ会議やペーパーレス会議システムの提案を担当していました。上流工程で評価を受け、独立も考えましたが踏み切れず、起業支援のプラットフォーム企業へ転職。イベント企画なども経験し、多忙な日々を送りました。

 その後、叔母の病気をきっかけに群馬と東京を行き来する中でメンタルが限界に達し、「後悔しない生き方をしたい」と転職を決意。英語を使う仕事に挑戦し、ミャンマーのアパレル工場で働いたことが大きな転機になりました。その後、大学時代の友人で現職オギックス代表の小木曽に誘われ、オギックスに転職。ゲームで企業課題を解決する“ゲーミフィケーション”の世界で、自分らしいキャリアを築いています。

移住のきっかけ

 移住のきっかけは、正直すごく軽い気持ちでした。2022年秋、新潟市東京事務所から届いた「視察ツアーのお知らせ」を見て、「ちょっと疲れてるし、リフレッシュがてら行ってみよう」と、僕と代表の小木曽たち数名で参加したんです。

 ところが実際に行ってみると、新潟は想像以上におもしろい街で、100年以上続く老舗企業や酒蔵が多く、佐渡金山などの観光資源も豊富。それなのに東京ではあまり知られていない。ここに僕らの“ゲーミフィケーション”の技術を掛け合わせれば、新しい価値が生み出せると感じました。大学や専門学校も回って学生の多さや人材とのつながりも確認し、2回目の視察では「ここに決めよう」と腹をくくりました。

 長野や静岡も候補でしたが、補助金制度も含めて新潟が最も現実的。ミャンマーでの経験もあって未知の土地に飛び込む抵抗はなく、独身だったこともあり、早々に移住を決めました。

移住してよかったこと・苦労したこと

 初めて新潟に来たとき、「佐渡があるから雪はあまり降らない」と聞いて安心して12月末に部屋探しに行ったんです。ところがまさかの大雪で、その後もしばらく灰色の空が続き、「RPGゲームの曇天の世界みたいだな」と思ったのを覚えています。引っ越し当初は寝室にエアコンがなく、寒さで夜中に何度も起きてしまい、慌ててマットレスをリビングに移してようやく眠れました。冬に移住するなら寒さ対策は必須です。

 恋愛に関しては、正直ちょっと苦労しています。視察で来たときは「美人が多い!」と思ったのに、実際に住んでみると出会いが本当に少ない。そんな少ない出会いの中でも、同じように地方で挑戦している人と出会うと、価値観も合いやすくていいのでは、と思っています。

 苦労したことも多いですが、新潟に来てよかったことももちろんあります。まず、車を買ってからは行動範囲が一気に広がりました。週末、ちょっとドライブがてら市外のカフェを巡るのが、今では最高のリフレッシュ時間になっています。

 そして、人口が少ない分人との距離感がすごく近い。チェーン店でも個人店でも、何回か通えばすぐに顔を覚えてもらえるんです。そういうあたたかみは、東京ではなかなか感じられなかったかもしれません。近所の坦々麺屋の店主とは同い年で、通ううちにすっかり仲良くなりました。期間限定だった「カレー味の汁なし坦々麺」が、僕があまりにハマって通っていたせいか、ついに定番メニューに昇格して。そういうちょっとした交流があるのも、新潟暮らしの楽しさのひとつですね。

移住を検討している方へのメッセージ

 移住を考えている方に伝えたいのは、「目的」と「柔軟さ」が何より大切だということです。
 新潟はごはんがおいしくて、人もあたたかい。都会みたいに常に消費を求められる感じがないので、心にも財布にも余裕が生まれます。ただし、移動の不便さは避けられません。移住したら早めに車を買ったりロードバイクを買ったり、自分の行動範囲を広げる手段を持っておいたほうがいいですね。

 それから、たまには都会に出てリフレッシュするのも大事です。新潟で東京のような生活をするのではなく、「新潟でしかできないこと」を楽しむ——田植えや陶芸、酒蔵めぐりなど、地域に根ざした体験をすると、移住生活はぐっと豊かになります。

 「ずっと住みたい」と思えば定住すればいいし、「次のステップ」として考えてもいい。大事なのは、限られた時間とお金をどう使うか、自分の価値観に合わせて暮らすことです。もし移住するなら、季節も意識して。雪が多い冬より、春や秋に来たほうが、新潟の魅力を存分に感じられると思います。補助金制度なども上手に使って、無理なく新しい生活を始めてみてください。

このページのトップへ